事業承継は、家業、ファミリービジネスといわれる事業体の大切な節目です。過去から未来へと永続的に企業を存続・発展させ、その雇用・技術及び「暖簾(のれん)」を後世に伝え守っていく事業承継は、オーナー経営者(先代)の役目として最重要課題です。
中小零細企業は、国家・地域経済の大切な担い手であるだけでなく、日本の職業文化そのものの継承の担い手であります。最近は経営者の高齢化に加え、身内での後継者のなりて不足によって維持・伝承されるべき雇用や技術・知識が途絶えてしまうかもしれないという重大な危機に直面しています。これは、一私企業の問題であるだけでなく、勤労文化、親の仕事観の継承など、職業文化の存続にっとても重大な問題であります。
企業の株式価値の算定等では、相続税など税務に関する知識や財産評価に関する知識が不可欠となります。しかし、企業の価値として継承すべきものには、目に見えない文化価値・企業価値があります。信用、暖簾といわれるものであり、計算できるものでもなく、人から人へ伝わっていくものです(暖簾勘定というものはありますが)。
織物や陶磁器業等、伝統的工芸品業界においては、組合活動を通じて事業承継に取り組んでいます。この場合は「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」に基づく承認計画の実施によって、組合が行う後継者育成事業等に対して、必要な経費の補助を受けられるという法律の後押しがあります。技術だけではない「ものつくり」の精神の継承、地域にとっての産業文化の継承でもあります。
商家の家訓などを熟読・拝読していると、事業承継が昔からの重要課題であったことがよく解ります。代代初代として事業家精神を引き継ごうとした家訓は、現代にも通用します。私見ですが、同族企業にとっては、家訓は経営理念より上位の概念ではないかとも思えるくらいです。同族企業だから理念がないように言っていた風潮がありますが、それは、コンサルタントの誤解だと思います。家訓に秘められ、込められたその志は理念という頭から出てきそうなものでなく、血肉からにじみ出てくる祈り・遺伝子のようなものです。
事業承継には、老舗企業の家訓の勉強が必須項目だと思っています。