家訓コンサルタント 瀬川 泰弘
家業永続の祈り 家訓
商家の家訓に学ぶ 家業存続のルール
時代を超えて伝わる先人の知恵とエネルギー
『商家は商品を通じ、有無を達するの職分、利は余沢』
(事業家は製品・サービスを通して、世の中の需要と供給を通じ合わせ、
不満を解消するのが使命。利はついてまわる潤い)
「勤めは利の元なり、よく勤めておのずから得るは、真の利也」
「かりにも浮利に走り軽進すべからず」
『その時世に応じ人気を視察し、日夜工夫これ有るべく候』
「自己は日々新工夫を廻らし益々向上発展し、時運の趨勢に遅れざらん
事に努力すべし」「工夫出精一日も油断これある間敷候」
「物品購求の多少に拘わらず来客は総て当店の得意なれば大切に礼儀を尽
くすべし、一品の購求せざるもその望みに叶うべき品物のあらざるは当店
の準備至らざる所なれば却って丁寧に敬礼を尽くし後々の愛顧を乞うべし」
『売りて悦び、買いて悦ぶ』
「売りて悔やむ」くらいが長続きする。「商いは牛のよだれ」
「相手少なき時に買入いたし候へば、売人も悦び申すべき」
『他国へ行商するもその国一切の人を大切にし、私利を貪る事勿れ』
進取の気性で北海道交易を進展させ、誰もが手掛けていない事業を展開した西川伝右衛門は、「余財があれば、必ず北海道の振興に投ぜよ」とまでいった。「ただそのゆくさきの人を大切に思うべく候」「世間よし」
『売家と唐様で書く三代目』
「親は苦労し、子は楽し、孫は乞食する」「金を積みて子孫に遺すも、子孫
よく守るあたわず」「陰徳善事」「押込隠居」
「家を我子に譲るまでは僅かに30年、其間は謹んで奉公の身と思うべし」
私が師と仰ぐランチェスター経営(株)の竹田陽一先生(中小企業コンサルタント)も、近江商人のことを弱者の戦略の名人と評価され、先代の戦略ルールの伝達こそが事業継承の要であると言われています。
戦略とは見えざるもの・将軍の術、戦術とは見えるもの・兵士の術で、戦略7分に戦術3分の配分だと教わっています。事業相続でも、資産などの見えるもののスムーズな引継ぎももちろん重要ですが、見えざるものの伝達・継承のほうが根本にあると考えます。
先代の経験・知恵、思い、信用、人付き合い、経営者魂、企業家精神などの、見えざるもの(戦略)の継承のための書置きが家訓であると思います。初心・原点の戦略が時代を超えて伝わってきます。
数ある家訓の中でも、中井源左衛門の「金持ち商人一枚起請文」が、有名です。中井家の祖業の漆器販売は、父の死や貸し倒れによって廃業していたようです。少年時代には日野椀の絵を描きながら、家運挽回を期しました。19歳のとき、天秤棒を担ぎ行商の一歩を踏み出します。90歳の天寿を全うしたときの資産は、11万両を超えていたともいわれています。
「お金のたまる人は運があり、自分は運がないと思うのは、間違いである。金持ちになろうと思うなら、酒宴・遊興・贅沢への誘惑に打ち勝ち、健康長寿を心がけるのである。始末第一に、商売に励むだけのことである。始末(節約)としわい(単なるケチ)は違うのである。」勤倹あるのみ。
才覚と算用は出てきていません。始末して気張る天秤棒精神あるのみ。